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俺を先頭に、シン、殿にケイの順で通路を走り、コウのいる部屋へと向かう。
暗い通路を抜けた先、開いていた扉から部屋の中へと飛び込んだ。
「コウ!」
そこには。
「よう。心配かけたな。」
柔らかな陽光に包まれ、布団の上で上体を起こし、朗らかな笑みを浮かべるコウがいた。
取り敢えずは大丈夫そうなその様子を見て、安堵したのだろうケイが、へなへなと座り込んでしまう。
それを見たコウは苦笑いを浮かべた。
「心配かけたなぁ。すまん。」
「・・・本当だよ。心配したんだから・・・。」
「いやあ、すまん。」
静かな部屋で、二人の応酬が続く。
「本当に心配したんだからね。わざわざ人間に頼んでまで医師とか薬師とか集めてさぁ。・・・どいつもこいつも役に立たなかったけど。」
「・・・そうなのか?俺はあの女の子に起こしてもらったけど・・・。」
「ああ、その子は小鈴って言って、俺が連れてきて、唯一コウを助けようと動いた人間だよ。」
「そうだったのか。・・・ありがとうな。皆。」
コウは少し考える素振りを見せた後、いつもの様に朗らかに笑って見せた。
「あれ、そういや小鈴は?部屋には居ないようだが・・・。」
俺がそう言うと、全員が部屋を見回す。
小鈴の薬棚と風呂敷包みが置いてある以外は、端に沢山の書物が置かれているだけの不思議な空間。
「あれ?いないね。あの子、どうしたんだろう?」
ケイがそう言うと、後ろで控えていた女官が事も無げに言い放った。
「あの人間なら・・・下級兵たちが牢に運びましたよ。」
「「「「は?」」」」
「ええ、確か危険因子を幹部様のお近くにいさせる訳にはいかない、と。」
呆気に取られた。
まさか、あの人間たちの言うことがここまで広がっていたとは。
そして、騙される奴がここまで多いとは。
暗殺なんて、そんなことは出来ない。
何故ならば俺たち幹部は秘密の儀を行うことで、不死の身になっているからだ。
そして、子を成し、その子が成長したとき、秘密の儀を後世に託し、死ぬのだから。
病や怪我をすることはあれど、死ぬということはない。
それは幹部と総統との秘密で、知らないのは当たり前だった。
それに、あの小鈴が暗殺なんてするわけがない。
・・・あれ?なんで俺はここまで小鈴を評価してるんだ?
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