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後ろ手を縛られ、目隠しをされ、現状がわからないままに進んでいく。
ギイと立て付けの悪い扉が開いたような音がした後、私は前に突き飛ばされ、体をしたたかに打ち付けた。
「ここに入っておれ!」
私を引っ立てた人の声が響き、バタンという音と共に静寂が身を包んだ。
さて、なぜこのようなことになっているのかというと、コウ様の汗を拭ったり、額に置いたりするための手ぬぐいの交換に部屋を出たら、兵士のアヤカシ様に捕まり、そしてどこかに連れていかれた、という感じだ。
コウ様の問診は終わったものの、安静にしていてくれとしか言っておらず、お着物の着替えや手ぬぐいの交換などにはまだ至っていない。
心配だ、と呟くと。
「何が心配なのだ?」
少し尊大な言葉遣いの誰かが声を返してきた。
同室者なのだろうか、ましてやここはどこなのだろうか。
不思議に思いながらも返す。
「患者様のご看病がまだ終わっておらず、そのまま患者様を放置してきてしまいました。その方のことが心配なのです。」
「そうか。お前は何故ここで患者を助けたのだ?」
不思議なことをいう人だ。
「不思議なことをおっしゃいますね。私は薬師です。どこであろうと、患者様を助けるのは義務であり、責任であり、私の望むことです。」
父から受け継いだ薬師という職は、私にとって天職であった。
人を助ける、ということにただただ突き進むそのシンプルさは、私の性に合っていて。
その助ける道の最短距離を探すことは、私にとって楽しさを覚えることだった。
だから、私は薬師という仕事が好きで。
患者様の生き生きとした姿や、幸せそうな姿を見る度に、私はこの仕事をしていてよかったと思い、この仕事に誇りを持つことができているのだ。
「・・・そうか。」
その人は、ふ、と息を吐きだした後、一言も声をかけてくることはなかった。
私も、どこかわからない手首を封じられているので、動くことさえできなかった。
けれど、すぐに。
バタバタと音が響き。
「小鈴!どこだ!」
ここに来て聞き慣れ始めたレイ様の声が響いた。
「は、はい。私はここです。」
様々な疑問が頭を埋め尽くすが、それを振り払い、助けを待ったのだった。
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