ギリギリで悟る人生

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 飴玉も一つある。丁度あの人と同じ環境。まあ俺の場合トイレから出られないのだが。とにかく、一ヶ月は何とかなるという自信が湧いてきた。  そこから、母親が早めに来てくれることを祈りながらトイレ生活が始まった。  数日過ぎると空腹に慣れてきたと共に、頭が冴えてきた。  取り敢えず、自分の過去を振り返ってみることにした。  俺は、小さい頃から様々な事に努力してきた方だ。成績も良く、運動神経もそれなりに良かった。あの頃は周りに褒められるのが嬉しくて頑張っていた感はある。今の自分とはまるで別人だ。  こんなになってしまったキッカケは高校受験と大学受験の失敗。どちらも希望先には行けず、挫折した。  努力は報われる、努力は裏切らない、なんてよく言うが、俺は報われなかったし裏切られた。  でも今思えば、大学で遊び呆けず努力を続けていれば違う人生があったのかもしれない。  まあ、ニート生活十年。今更そんな事を考えても遅いか……。  それから更に二週間が経過した。遂に飴玉を口にする。  体に糖分が染み渡っていく。まさに幸福。これだけでこんなに幸せを感じるとは思わなかった。  人間は、環境により思考が変わる生き物で、思考が変われば人生も変わる。  まだ、間に合うだろうか……。いや俺には……。
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