ギリギリで悟る人生

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ギリギリで悟る人生

 トイレに閉じ込められてから、もう一ヶ月は経つだろうか。  食糧は、水とポケットに入っていた飴玉一つのみであったが、俺はまだ意識を保ち生きている。  しかし、もう限界が近い。体的にも精神的にも……。 ――――何故こんな事になってしまったかというと……自宅アパートのトイレに入った際、ドアの前に立て掛けてあったテーブルが倒れ、ドアが開かなくなってしまったのだ。  自分が閉じ込められてしまったと認識した時は冷や汗が止まらなかった。  その理由は、このアパートには現在自分しか住んでおらず、叫んでも誰にも気付いてもらえないからだ。しかもトイレには換気用の小窓が付いているだけで、人が通り抜けることは不可能。  新聞も取っていないし、ニート暮らしをしている自分を訪ねてくる知人はまず居ない。携帯も部屋に置きっぱなしだ。唯一の可能性は、数ヶ月に一度俺の様子を見に来る母親だけだが……先日来たばかり。  絶望的だ。  ドアを壊そうと試みたが、頑丈に出来ており手足が痛くなっただけだったので諦めた。  ひたすら叫んだ後に、一旦冷静になり、一ヶ月水だけで生活したという芸能人のニュースを思い出した。     
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