0人が本棚に入れています
本棚に追加
下校、改札を出て、左折する。
まっすぐ進むと人通りが減って
少し治安が悪い所に出る。
居酒屋とか怖い人の事務所、
トタンでできた壁の家、
新聞紙の上で寝るホームレス。
それらを抜けたら私の家につく。
?
家に入ると部屋が暗い。
ただいまと呟いても返事はない。
11時頃に帰る父と朝帰りする母は
まだ仕事だろうから。
私は家の食べ物を適当に漁って、
風呂にはいって寝る。
これが私の日常。
私が寝ようとした時に玄関の扉が開く。見に行くと父と目が合った。
「もう寝る時間のか」
「うん。おやすみなさい」
お酒と煙草、汗、
色んな臭いが混ざっている。
布団に入っていると
一枚扉を挟んだ向こうから先程より、
強い煙草の臭いが漂っているのに
気がついた。
吸ってるのかな。
冷めた毎日を送る。
何も変わらない。
なにか刺激が欲しいと願う。
そう願いながら、
煙草の香りと寄り添って眠りについた。
?
朝起きると、母がいた。
赤い口紅に
露出度の高いドレスを着ている。
「おはよう」
「お母さん、今帰ってきた?」
父と同じ煙草の匂いを
纏っていたドレスから寝間着に
着替えていた。
「うん。父さんはさっき出ていったわ」
灰にまみれた
くしゃっとされた煙草が1本あった。
両親は揃って喫煙者だ。
ストレスを伴う仕事前には
吸っていくのが習慣らしい。
「私も着替えてご飯食べたら行くよ」
「じゃあ今日はご飯作ってあげる」
キッチンに向かう母を見てから、
洗面所にいった。
顔を洗うとき鏡の自分と目が合う。
疲れたような、そんな顔。
私は毎日この顔をみると、
同じ1日が始まることを予感して
虚しくなる。
私が毎日意味はあるのかなと、
迷ってしまう。
?
着替えている間に
母がお弁当を作ってくれていた。
「今日は機嫌がいいの?」
「たまにはしてあげなきゃって
思ってはいるのよ、嫌だった?」
「嫌じゃないけど。珍しいから」
珍しいけど、たまにあること。
私はそのお弁当を持って学校へ。
毎日は繰り返しなんだって思ってた。
でも違った。
目に入ったのは人だかり。
そして、私に声が掛かった。
声を掛けた人は、消防士の男の人。
焼けた肌にすすをつけて、
汗が滲んでいる。
「ご家族の方ですか?」
その言葉に私も汗が滲んだ。
最初のコメントを投稿しよう!