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ヴィムは覚悟を決めたような表情をした。
「そうですね…むざむざ二人とも死ぬことはない―」
「え?」
「背中を押されました」
「ちょっと―」
ヴィムはヒトミより前に歩み出た。
「何だお前、巻き添え喰らいたいのか?」
男がまくし立てるように言った。
すると次の瞬間、ヴィムの体からドス黒い瘴気が上がった。小刻みに震え、息を乱している。ヴィムは誰かと話すように独り言を言った。
「分かってる――ひさびさに、たらふく喰わせてやるから?」
「あんたそれ―」
ヴィムは苦しそうにしながらも笑みを浮かべた。
「僕も呪いに蝕まれてます。ただし、彼みたいな捨て身の契約とは違って僕の中で共生してるっていうか、喰われてるんですけど…この呪いの特性は――吸収です」
途端に、ヴィムから形容し難い容姿の禍々しく黒い化け物が湧き上がり、男が放出している赤いそれを、どんどん吸い込んでいく。
「うわぁあああ!?」
男は悲鳴を上げ、逃げようとしたが、あっという間に呑み込まれ、その場に倒れ込んでしまった。
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