4人が本棚に入れています
本棚に追加
山岳地帯を走る列車。その一つの車両の中には結構な人数がいたが、簡単な毛布だけで、座席などは一切存在せず、またこの車両の幅自体が広いこともあってか、かなり空間に余裕のある作りになっていた。
そこで雑魚寝の長旅を送っているのは、一見ごく普通の旅行者たちだが、実態を占めているのは、世で賞金首と言われる者たちだった。
彼らは最近、取り締まりや追いの手が厳しくなってきている賞金稼ぎから一時逃れるために、一般的な旅のルートに紛れて、身を隠せる場所に向かう最中だった。
一人の男が退屈まぎれに誰となく話しだす。
「しっかし、こんなルートで向かう事になるとはな?」
「貨物の中みたいなモロのやつより、逆に安全なんだよ。普通の身なりで、金のなさそうな雑魚寝ゾーンに身を寄せ合い、けなげに長旅をする客。これほど無害を装える隠れ蓑もねぇ」
とは言え、皆、抵抗手段であるエモノや商売道具と呼ばれているモノはしっかり各々の鞄なり、ボストンバッグなりに仕込んでいた。そればかりは手放せない。
「ただ、その分、モグリには十分気をつけないとな?」
「ああ。あいつら最近こぞって、狩りに来てるからな――お前に言ってんだぜ?」
「え?」
突然、指摘された一人の青年は、びっくりして身を縮めた。
最初のコメントを投稿しよう!