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ヒトミはいきなり話に入ってきた人間にビックリした。
「うぅ、寒――そろそろ、話は一段落しましたか?」
さっきのトレーナーの青年だった。熱々のコーヒーを両手に持っている。
「あ、すいません。盗み聞きするつもりは無かったんですけど、耳に入ってしまって?」
そう言いながら被っていたキャップを取った。金髪で恐ろしく顔が整っていて、特徴のない無地の黄色いトレーナーにGパン。そんなありふれた格好だと、余計に顔の良さが際立って見えた。
「あ、これ。カウンターで一つって頼んだら二つ来ちゃったんで、どっちか要りません? まだ熱々ですよ――」
そう言いながら、片方をずずっとすすった。
「何、こいつ…知り合い?」
ヒトミがいぶかしげに聞くと、ヴィムが言った。
「ヒトミさん、すいません…連行は、また今度ってところで」
「え? やっぱり逃げるの?」
「すいません―」
「ちょっと―」
ヴィムはいきなり席を立って駆け出した。ヒトミも続いた。
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