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ヒトミは腕力には自信があった。男でも、その辺の素人や力自慢程度じゃ相手にならない程度に。しかし、どんなに力を入れても、一ミリたりとも押し返せなかった。
青年が相変わらず振り向きもしないまま話した。
「トンファーですか――腕力活かして小回り効かせるなら、いいかもですね?」
「!?」
「…利き腕でもないのに、えらく地力がありますねぇ?」
ヒトミの右腕は空いていた。
だが、攻撃したくとも出来なかった。何故なら、右を振りかざすことで、このナイフで抑えられている左に掛けている力が少しでも緩んでしまうと、その瞬間に切り裂かれるイメージが拭えなかったからだ。
こちらは全く視界に入ってないはずなのに。
この仕事をしてきて、それなりに修羅場はくぐってきた自負はあったが、こんな威圧の掛けられ方は初めてだった。
それ以上、どうしていいか分からなかった。
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