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「この辺の島になぁ――原住民なんて居ねぇよ?」
ヴィムは唖然として聞き返した。
「何言ってんだ――じゃあ、あいつらは何なんだよ?」
「あれは、人間じゃねぇ。この島が作り出した、生き人形だ」
「は?」
「この島自体が巨大生物なんだよ 島バミっていうんだ。こいつらは、気長に待って大漁一気にエサをほうばる習性があってな?
掛かったエサを、すぐに喰わねぇ理由は謎だが、一度懐柔なり何なりして、安心しきった所を、一気に絶望のどん底に叩き落とすと脳内に特有の分泌されて美味っていう説がある。
満期になると、人型のあいつの分身が一気に人間を食い尽くすらしいぜ?」
ヴィムは呆然としていた。
「この辺は、そういうスーパーナチュラルな罠がそこら中に張られてんだ。島バミもその一つだ。世間知らずにも程があるぜ。ババ掴まされたな、お前? 命知らずの海に出るなら、それだけの知識がねぇとよ?」
ヴィムは倒れて、笑い転げた。
「何言い出すかと思えば――おっさん頭大丈夫かよ?」
ヴィムは砂浜の砂をかき上げて言った。
「どう見たって普通の島じゃないかよ? ほらこの砂だって、木だって、砂浜の生き物だって、どこが化け物なんだ?」
マトフはこともなげに言った。
「そりゃ、そうだ。島に擬態してんだ。擬態生物っているだろ?あいつらと違って、見た目だけじゃなく、砂も木も山も全て本物だ。バカでかい自分の上に本物の島を作って擬態するんだよ、こいつらは?
最後に全てを喰い付くした島が割れて、地獄の釜の蓋が開くまでな―?」
「そんな、バカなこと―」
「世界は広いぜ。まるで、そこに住み着く原住民のごとく、話したり、生活してるように見せる擬態を作りだせる奴も居るってことだ」
突然、地響きが起こり――どこからか、唸り声が聴こえた。
ヴィムは怯えた。
「そろそろ行方不明者が出るかも知れねぇ――敏感にな?」
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