第4話

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ヴィムは獣道を速やかに、迅速に駆け上がっていた。 さっき呪いを取り込んだ時は思いがけないほどあっけなかったが、妙なダルさもある。相性が良かった、取りあえず第一関門クリアだなと言われた。  だが。ホッとしてる時間はない。 マトフは助ける気概はないとか言いながら、注意をはらいつつ、この島の見取り図を描いて回ってくれていたようだ。さすがに監視の多い、山奥の中心部には近づけなかったようだが。 山の裏側の方から一気に最短でたどり着ける獣道を、見つけ出してくれていた。 マトフに指示されたことを、頭で反芻する。 ―いいか 母体を吸い込むまでは絶対使うなよ? そいつさえ吸収しちまえば、お前の勝ちだ。何とか、そこまでは堪えて乗り切れ。チャンスは1回だ。 ―恐らくそいつがいる場所は、一際目立つはずだ。そこを一直線に目指せ? ―そしていいか、呪いは必ず、母体の奴を目の前にした時に開放しろ。間違っても、その前に他の奴を吸い込まないように。それは、お前の意志でコントロールできるはずだ。 呪いを取り込めたなら、あくまで奴らは寄生してる状態。その辺は、お前に主導権がある。 坂が緩やかになり、草むらをかき分けて進むと、広い空間に出た。  少し遠くに、いくつか似たような作りの棲家があった。 ―たどり着いた。 ぽつぽつと仮面をかぶった原住民たちがうろついている。 草むらから回り込んで、目的の場所を探すことにした。 それは比較的、すぐ見つかった。明らかにその家の前を取り囲んでいて、他と違うものが一つあった。 マトフに言われた通り、家の周りを注意深く観察すると、裏手にそれを見つけた。 家の下の方に子供一人入れるかどうかの風穴があった。だが、見張りが何人かいる。 時間がない、どうする? その時、その家のてっぺんに鳥が止まりカン高い声で鳴いた。一瞬、そっちに注意が向くのを見計らって駆け出しその穴に滑り込んだ―
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