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ヴィムは固唾を呑んだ。マトフの最後のアドバイス。
――いいか、吸い取る時は呪いに心で命じろ。完全にそいつを抹消するために
『こいつの全てを、喰いつくせ――こいつ自身、こいつのかもし出すもの全てを――』
すると、何とも形容できない凄まじい吸引力が自分の体を中心に渦巻いた。
母体の男は、最初は何とかこらえていたが、徐々にこっちに引きずられて来ているようだった。
だが次の瞬間、開き直ったのか、こっちに向かって突進してきた。逆の発想だ。
「くそっ 来るなら来い!?」
だが、呪いの吸引力には抗えず、凄まじい断末魔を最後にヴィムの中に、ヴィムの発するものの中に呑み込まれていった。
叫び声の反響がいつまでも鳴り止まないようだった。
我に返るとヴィムは、呼吸を乱し、肩で息をしていた。
今しがた起こった事が、悪い夢でも見ていたみたいだった。
だが、さっきまでこの空間を支配していた、恐ろしい形相の母体はもはや影も形も見当たらなかった。
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