漢の散り際は、櫻の如しが華と見ゆ

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漢の散り際は、櫻の如しが華と見ゆ

 ワイワイガヤガヤ・・・  3月の、少し暖かくなって来た頃  この辺りは毎年、満開になった櫻を愛でる為に多くの人々が集い、年に数日しかないこの櫻の花を心から愉しんで旨い酒と肴に舌鼓を打っている。  私は、愉しそうに飲んでいる彼らを横目に見ながら歩き、少し離れた場所でポツンと1本だけ花を咲かせている櫻の下で立ち止まり、感慨深げに見上げた。 「あれから、もう10年か・・・」  10年前のあの頃、私は今とは違う会社に勤めていた。  高校を卒業してすぐに就職し、世間知らずで未熟だった小僧の私を、職場の先輩達はとても厳しいが丁寧に、大人として必要な生き方を叩き込んでくれた。  当時教えて貰った事は、本当に貴重な体験と勉強だったと今も感謝している。  特に、私の教育係と仕事の面倒を見てくれた、先輩と課長には本当にお世話になった。  世の中の、酸いも甘いも、綺麗も汚いも、みんな包み隠さず私に見せて教えてくれたのだから。  あの時、訳あって転職をする事になった私は大恩ある彼らに別れの挨拶が出来なかったことを、今でも悔やんでいる。     
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