漢の散り際は、櫻の如しが華と見ゆ

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 お巡りさんを殴ってしまったのだ。  激怒したお巡りさんは、仲間を呼んで彼を取り抑えると署へ連行すると言う。  課長や社員達は、お巡りさんに謝るが許してもらえず埒があかないので怒り出し、この櫻の下で警官対酔っ払いの乱闘騒ぎとなった。  でも、警察には敵わなかった。  結局、我々の大半が署へ連行されるという最悪の結果となってしまった。  私は皆へ挨拶する機会を失ってしまい唖然としていると、警官達から羽交い締めにされた課長と先輩が笑いながら言う。 「漢は太く短く潔くだ!ワハハ!」 「貴様!大人しくしろ!」 「長い方がモテるぞ!ワハハハハハ!」 「もう連行じゃない、逮捕だ! 覚悟しろ貴様らあ!」 「ワハハハハハ ワハハハハハ ワハハハハハ」  彼らを見たのは、これが最後だった。  もう10年も前の事なのに、あの時の事件は今も鮮明に覚えている。 「・・・みんな、元気かなあ。 課長、先輩、あの頃教わった生き方、役に立ってますよ」  綺麗に咲いた櫻の花を、静かに見上げながら続ける。
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