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「もうヴァルシェったら…。」照れたように微笑むレティーナの細い腕にきらりと銀色の腕輪が光る。ヴァルシェは、自分の腕にはめられた同じ腕輪をこっそり見る。…徐々に顔が緩んでしまう。
「おい、ヴァルシェ。貴様今がどういう状況かわかっとるのか?」
老齢の騎士が苦々し気につぶやく。彼がまとわる鎧は傷だらけで、歴戦の呈を感じさせるものだった。
「ガ、ガルセン殿!!…自分はっ」
言い訳を取り繕おうと言葉を探していると、風に乗って一本の矢が飛んできた。
「わぁああ!!」「きゃぁああっ!」
その一本を皮切りに無数の矢が飛んできて、隊列を乱していく。
「…くっ…土に足が!」レティーナはバランスを崩し、その場に倒れこむ。落馬した先にはかつて仲間だった者たちの亡骸があり、光のない瞳と目が合う。
「うっ…ごめんなさい…守れなくて」
「姫様!!私の馬をお使いください!!我々は追っ手を足止めてまいります!!」
若き騎士たちが先陣を切ってかけてゆく。
「?!まちなさい!!わたしも・・・」
「姫様…我々フォルスの騎士たちはあなたに仕えたこと、誇りに思います…!どうか、我々の遺志を未来に紡いでください!」
レティーナの声はむなしく空を切る。「ヴァルシェの奴と・・・お幸せに!」
彼らの姿は夜の闇消えていった。「…そんなっ…!くっ…」レティーナは走り出した馬にまたがり、後を振り返り、周りを見渡すと弟を探す。
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