序章

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序章

漆黒の闇。 頬を撫でる風は冷たく、うっすらと水気を含んでいる。たなびく長い髪は満月の月に照らされまるで光を束ねたようにきらきらしている。 「もうすぐ森に入る…!みんな無事?!!」 凛とした声が夜の闇に広がると、背後を連なる数十の兵士たちや騎士達の疲れ切った顔を綻ばせた。皆、着ている甲冑は傷だらけで、頬も薄汚れている。服はすすだらけで、武器もボロボロだった。 「ここまでよく頑張ったね、セレン。それに皆も…!もう少しで森につくから、そしたらきっと銀の種族が力を貸してくれるわ。」女性はすぐ後ろに続く老齢の騎士と、その馬にまたがった少年に告げる。女性の眼に光は宿り、希望を見出している。 「姉さま、ごめんなさい…僕がもうがもう少し強かったら。」  しゅん、とうなだれる弟にレティーナは優しく微笑む。セレンはまだ10歳、その顔には疲労が濃い。…無理もないと思う。今は何よりも王子である弟を守らねばならない。それは何よりもレティーナに力を与えていた。 「大丈夫ですよ!セレン様!ここを乗り切れ際すれば道は開きます!それに、我々もレティーナ様もいらっしゃいますから!」     
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