九章 監獄の赤い燭

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・ グレイは何かを思い当たったように視線を止めた。 「………なるほど」 近頃やたらと邸のまわりが騒がしかった。 いくら雑魚だと笑っていたとしても、ちょろちょろと辺りを彷徨(うろつ)かれては目障りだ。 大したことも出来ぬ低級な魔物達だからと縄張りの結界もそう強めてはいなかった。 だが実際、こうやって夢魔がルナに手を出した。 狙いはグレイだったとしても、そのグレイの強力な魔力の源がルナ自身だと知れれば次の標的は間違いなくルナになるだろう。 「あっ──」 グレイは背中から覆っていたキュバスを急に自分のほうへと振り向かせた。 グレイはキュバスの熟れた唇を長い指先でゆっくりなぞる。 「自分が夢魔だったことに感謝するんだな…」 そういって魅惑的な微笑を浮かべる… 夢魔は淫魔 淫魔は情欲を掻き立て餌を誘き寄せる魔物。よってバンパイアと張り合う程に美しい── グレイはキュバスの唇を撫で頬を伝いふくよかな乳房に触れながらうっとりとした視線をキュバスに投げ掛ける。 「微々たる命を賭けてこの俺に挑んだことに今回だけは敬意を払ってやる」 「──っ……ほ、んとに…」 キュバスはグレイを見上げた。 「ああ…お前にこの俺の力を少しばかり与えてやろう…」 キュバスは信じられないとばかりに頬を染めてグレイの赤い瞳を見つめた。 瞳が揺らぎ捕食の牙が再び剥き出す。 グレイはキュバスのふくよかな乳房の上から心の臓に牙を立てた。
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