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「来ない…の?…」
「はい」
聞き返すルナにモーリスははっきりと言い切る。
「…そ…ぅ…」
やだ──あたしは何を落ち込んでるの!?
てっきり後から来るものだと思い込んでいたルナの唇から小さな声が漏れ、そのことにルナは自問を投げ掛けていた。
いつの間にか期待をしていたのだろうか?
夜はあの魔物と過ごすことが当たり前になってしまっていた自分が少し恐ろしくもある。
もしかして──…
あたしの気持ちはもうあの人のことを──っ…
ううんっそんなことない!絶対にないっ!
何故か頬が熱くなる。ルナは思い詰めた表情を振り払うように首を振った。
「ルナ様?いかがされました?」
「何でもない!」
ルナは微かに赤くなった顔を見られないようにと、足早に別荘へと向かった。
中に入るとモーリスに連れられ部屋へと進む。明るいクリーム色の壁にホワイトウッドの床。あの屋敷の真っ黒な壁と真っ赤な絨毯とは大違いだ。
まるで空気さえも澄んでるように思えてくる。
ルナは窓を開けてバルコニーに出ると大きく深呼吸をしていた。
白く塗られたバルコニーの手摺に手を掛けて身を乗り出すように景色を眺める。
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