十章 甘い棘

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・ 「それはなりません。旦那様はここでの静養を御許しになっただけ。他の自由は認められてございません」 「そんな…」 ルナは途方に暮れた表情をモーリスに向けた。 「ちょっともだめ?」 「ルナ様、花嫁の儀式が済めば貴女様も晴れて魔物の仲間入り。人間への執着は今断ち切っていただかなければ…」 そんなモーリスの言葉にルナは強く反論した。 「──…!そんなっ、無理よ執着を断ち切るなんてっ」 「出来ますよ」 「簡単に言わないで!」 叫ぶルナにモーリスはにっこりと微笑み返した。 「大丈夫、私だって断ち切ることが出来たのですから」 「え?」 モーリスは笑顔を向けたまま頷いた。 「私も、元はルナ様と同じ人間でございます…」 「うそ…」 「…か、どうかはまた後にして夕食の支度が整いました。どうぞ冷めぬうちにお召し上がりください」 うそ…モーリスも元は人間? だってっ…物を操ったり魔力だってあるのに── 何事もなかったように、モーリスはルナのカップにお茶を注ぐ。そんなモーリスにルナは疑いの目を向けたままスープを口に運んでいた。 モーリスも人間だった──? ならば、なぜ今はバンパイアに? ささやかな夕食を済ませた後ルナはベットの中でそのことばかりを考えていた…
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