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関谷の頭を抱き込むと、彼は頭頂部にちゅっと唇を落とした。くすぐったくてもぞりと身体をよじると「拓斗さんはどうなん?」と耳元でささやかれる。
男性にしか興味を持てないことや、そういった方面にとことん疎いことを、彼にたやすく暴かれてしまったときも、驚きはしたが嫌な気分にはならなかった。
「ぼっ、僕も、いっしょに……いたい、よ」
そんなしどろもどろの返事なのに、満足そうな笑みを浮かべた彼は、関谷が初めて触れ合った、同じ性的指向の人だった。
「お兄さんにもう一度会いたいと思って、あの場所をうろうろしてたんです」
偶然のようなかるーいノリで声をかけられたと思っていたが、実際のところ陽太は相当緊張していたらしい。
「覚えてなかったらどないしよって……」
「そんなわけ……」
陽太みたいな人がどうして自分のようなものに興味を持つのか、緊張などするのか、まるで信じられない。
むしろ関谷の方が何度もどうして? と問いかけて、仕舞いには「オレを信じられないの?」と陽太をあきれさせてしまったが、それから急速に距離を縮め、いつのまにか初めてのキスもセックスも経験した。
遅咲きを気恥ずかしく思いながらも、これが恋なのかと浮かれてしまう自分を抑えられない。そんな気持ちは初めてだった。
だが同時に、こんなに幸せでいいのだろうかと、いつも怖い。
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