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関谷は自分が面白くないタイプの人間であることも十分わかっているし、自分に自信がないネガティブ思考なので、自分の部屋に彼のようなキラキラした男がいることが不思議で仕方ない。
カジュアルだけれど雑誌から抜け出てきたようなおしゃれな服装。ギターを持っていたから音楽をやっているのかも。陽太本人が女性に興味がなくたって、若い女の子にかなり騒がれそうな容姿だ。そもそも、男性を選ぶのだって、関谷のような地味なタイプを選ばなくてもいいのにと思ってしまう。
「おいしい?」
小さく刻まれたネギやチャーシューに感心しながら、香ばしく炒められたチャーハンを口に運んでいると、顔をのぞき込まれる。
「うん……」
「ほんまに?」
「本当だよ。陽太くんのごはんはいつもすごくおいしい。なんでも上手に作れるんだね……」
うちにあった貧相な食材が、美味しいごはんに変身したときの衝撃は忘れられなくて、それからも食事のたびに毎回驚かされている。
素直な気持ちを伝えると、陽太の吸い込まれそうな強い光を持つ瞳が、途端に柔らかく細められた。ころころ変わる魅力的な表情から目が離せない。
「うちな、両親が仕事してて忙しくって。それで、子供のときはいっつも兄貴と飯食ってたんだけど、兄貴全然料理できへんくてな」
彼が家族のことを話すのがめずらしくて聞き入った。
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