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「そのくせノせるのがうまくて「あれもおいしい、これもおいしい」ってえらい褒めてくれるもんやから……」  気付いたらいろいろな料理が作れるようになっていたそうだ。兄弟ふたりの食事風景を懐かしんでいるのだろうか。ふっと微笑むその表情はやさしい。  仕事から帰ると陽太はいつもごはんを作って待っていてくれる。彼から与えられる温かい食事と、関谷の身体を奥深くまで暴く体温の虜にならないわけがなかった。  今のままでも十分幸せだ。たとえ陽太が謎だらけだとしても。  そばに誰かがいてくれるというのは、こんなにも生活にハリが出て、目に飛び込んでくるすべてのコントラストがはっきりとして、世界が色鮮やかになる。関谷にとっての彼は、薔薇色だ。  でも心は欲張りで、もっともっと、彼を知りたくなる。普段なにをしているの? どんなことに喜びを感じる? 僕たちは――つきあっているの?  「スーツ……」 「えっ?」 「よう似合ってるなあ……大人の男って感じや」 「そう……かな? あんまり着こなせてる自信がない、よ。僕も陽太くんみたいにおしゃれならよかったんだけど」 「かっこええよ。しかもそれ、既製品やなくて仕立ててるやろ?」 「すごい。よくわかるね」 「服とかわりと好きやから。それがかなりええもんなのは、わかるよ」     
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