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 バーといってもお酒だけでなく食事もできるようで、瀧川が男性のママと親しげに話しながら、適当にあれこれと料理を頼んでくれる。ホタテのカルパッチョ、彩りの美しいサラダ、ピロシキ、熟成肉のステーキ。系統ははちゃめちゃだが、どれも素材の味が生きている。 「……おいしい」 「だろ。うまいもん食うと、視界が開けるぞ」  ふさぎ込んでいる関谷へ、瀧川なりのねぎらい方なのだろう。事情を根掘り葉掘り聞くようなことはしない。育ちなのか性格なのかわからないが、ここぞというときはやはり振る舞いがスマートで大人だ。それは社長のドラ息子と揶揄される一方で、なんだかんだ周りから慕われるところからもわかる。 「すみません……気を使わせてしまって」 「いいんだよ。いつもお前にはよくやってもらってる。これくらいさせてくれ」  瀧川は食事にはほとんど手をつけず、関谷の皿へ次々と料理を盛った。なんだか涙が出そうで慌てて店内のディスプレイに視線を移した。 「あ……」  あまりのことにくぎ付けになった。画面にはローカルっぽい音楽番組が流れていて、薄暗いライブハウスでバンドが演奏していた。その後インタビュー画面に切り替わる。  このところ急成長のバンドで、拠点を関西から関東に移し、メジャーデビューアルバムを発売すると発表している。その中心で司会者の質問に答えていたのが、陽太だった。     
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