23/33
前へ
/33ページ
次へ
 関谷は日頃テレビをほとんど観ず、音楽もあまり詳しくないので寝耳に水なのだが、瀧川はゴシップの内容を一通り知っているようだった。画面では司会者がさらに続ける。 「陽太さんはその後ゲイをカミングアウトされたので、その方とつきあっている事実はないわけですよね」 「はい」 「バンドのファンはティーンの子が多いですよね。彼女たちの印象が悪くなるとは思わなかったですか?」 「確かに、音楽と関係ないところで騒ぎになって、申し訳ないと思っています。けど、もう出てしまったことやし、それやったら誤解されたままやなくて、本当の自分を知ってもらう方がええかなって」  ゆっくりだが、一語一句かみしめるように言葉を紡いでいる様子は、とても真摯に写った。 「陽太さんのその気持ちは、ファンの方に通じたんですね」  オフィシャルサイトにあげたファン向けの動画は、瞬く間に拡散されているそうだ。また、動画の中で好きな相手をにおわすコメントをしているため、恋路を応援しようというツイートが止まらないらしい。 「もう会えないけど、大切な人がいるんだってさ。遊んでそうな外見なのに、意外と真面目だよね、この子」  感心したように瀧川が話す言葉はもう、ほとんど聞こえなかった。 『陽太がハッピーになって、またいい曲を届けてくれるのが、私たちの幸せだよ』 『どうか、陽太の想いが相手の人に届くまで拡散してください』     
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

248人が本棚に入れています
本棚に追加