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ファンのツイートがいくつか紹介された後、彼の顔がアップで抜かれる。
「その人に出会ったとき、自分はどん底のときやったんです」
メジャーデビューが決定的になった頃、どうしても相入れないことがあり、結成当時からのメンバーがひとり抜けた。その影響からか残されたメンバー間もぎくしゃくして、一時は空中分解寸前だったらしい。
彼は曲が作れなくなった。ボーカル兼ギターを担当し、バンドのほとんどの楽曲を作成していた彼は、プレッシャーに押しつぶされて逃走した。
「何事にも一生懸命な人で、すぐ好きになりました。一緒にいる時間はかけがえのないもので、幸せでした。こんなことを話したら、とても真面目な彼に迷惑をかけることになってしまうかもしらんけど、彼がおってくれたおかげでオレはメンバーとも向き合えたし、それでまた音楽をやろうって思えたんです」
「なるほど、陽太さんの復活にはその方の存在が大きかったのですね。それで、みんなが気にしているところは、その恋は現在進行形じゃないの? ってことかもしれません。実際のところ、どうなの?」
「…………そう、ですね」
陽太はそこで一旦言葉を切るとうつむいた。次の言葉を待つように、インタビュアーもなにも言わない。やがて、顔をあげた陽太が口をひらいた。
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