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「それでも、一時はもうだめかもしれへんって思った言うたやろ?」
「……そうだったね」
「オレ拓斗さんのこと、すごく尊敬してるんよ。えらい緊張しいのくせに、苦手な人ともきちんと接して、専務さんの仕事が滞らないように努力してる」
「そ、……そのくらいしか僕にはできないから」
「あとな、拓斗さんは絶対に人のせいにせえへん。そういうところにも惹かれた。オレも誰かのせいにするんやなくて、自分に責任持ってがんばらなあかんって思ったんよ」
関谷みたいな堅物でも真面目に生きてきたことで、好きな人に力を与えられたなんて、とてつもなくうれしい。
「これからオレも拓斗さんに負けへんくらい頑張って、たくさんの人にうちらの音楽を届けるつもりや」
「応援してる」
再び出会えて、彼が手を差し伸べてくれた。その手をもう自分からは離さないだろう。
「あ、そうや。今度の新譜はオレからちゃんと渡すからな」
「え……?」
「CD、こっそり買ってくれてたやろ? それもおんなじの何枚も」
彼が指さした先、サイドボードのには彼のバンドのCDが置いてあるのが見えてしまったようだ。
「ありがとう。でもやっぱり自分で買うよ……応援したいから」
「ほんま? ほなおおきに。なあ拓斗さん」
「ん……」
「ずっと一緒におってな」
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