32/33
244人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
「それでも、一時はもうだめかもしれへんって思った言うたやろ?」 「……そうだったね」 「オレ拓斗さんのこと、すごく尊敬してるんよ。えらい緊張しいのくせに、苦手な人ともきちんと接して、専務さんの仕事が滞らないように努力してる」 「そ、……そのくらいしか僕にはできないから」 「あとな、拓斗さんは絶対に人のせいにせえへん。そういうところにも惹かれた。オレも誰かのせいにするんやなくて、自分に責任持ってがんばらなあかんって思ったんよ」  関谷みたいな堅物でも真面目に生きてきたことで、好きな人に力を与えられたなんて、とてつもなくうれしい。 「これからオレも拓斗さんに負けへんくらい頑張って、たくさんの人にうちらの音楽を届けるつもりや」 「応援してる」  再び出会えて、彼が手を差し伸べてくれた。その手をもう自分からは離さないだろう。   「あ、そうや。今度の新譜はオレからちゃんと渡すからな」 「え……?」 「CD、こっそり買ってくれてたやろ? それもおんなじの何枚も」  彼が指さした先、サイドボードのには彼のバンドのCDが置いてあるのが見えてしまったようだ。 「ありがとう。でもやっぱり自分で買うよ……応援したいから」 「ほんま? ほなおおきに。なあ拓斗さん」 「ん……」 「ずっと一緒におってな」     
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!