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「船が着いたぞ」
「おー。そっち、気をつけろ」
逞しい男達の低く大きな声が飛び交うここは、交易で栄えるシンドリー国国営港。
大きく開けた入り江には、毎日のように荷物を乗せた大きな業者船が出入りしている。
そんなの港に到着した一艘の商船に、まだあどけなさを残した少年が完全に停泊するのも待てずに不安定な足場を駆け上がっていった。
「ロルフ兄さん、いるんでしょう!」
荷下ろし前の慌ただしい船に乗り込んだ少年は、甲板に乗り込むなり必死に兄の名前を呼びかける。
「レナルトか、俺はここだ」
手を上げて応えたロルフは、家が営んでいる商団の船をしょっちゅう隠れ家代わりにしているものだから、春だというのに日に焼けて浅黒くなった端正な顔で現れた。
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