心情吐露

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 受験ってのはなんとも優しいシステムだと思うね。だって不合格でも通知が来るんだぜ? 残念ながらとかなんとかさ。いい所だと励ましの言葉なんか添えてくれたりするんだ。まああの頃はうるせえバカヤロウ!くらいにしか思ってなかったけど、今ならあの優しさがわかるってもんだ。  俺はいずれは有名な小説家になるなんて周りに言いふらして自分を鼓舞して見て早八年。気がつけばもうあと二年で三十にになろうとしている。その間確かに飲んだくれたり遊んだりもしたけどよ、小説だって書いてるんだぜ? 毎回毎回上手く書けねえって半べそかきながら、それでも出来上がったら面白いもんが出来たって胸張って、そんでもって新人賞に送ったら歯牙にもかけてもらえない。有名どころか小説家にすらなれていない。一度だけいいところまでいっちまったもんだから、こんなもんじゃないこんなもんじゃないって諦められずにずるずる来ちまってる。だけどそろそろ限界か、自分に才能がないんじゃないかって、今まで見ないようにして来た可能性が視界にちらちらと入ってくるんだ。  友人もいないで俺だけだったらそれでもやってやるって奮起しただろうがね、周りの人間を見ると背中が丸まっていくんだ。仕事が順調で海外で働きだしたやつもいるし、恋を知らなかった理系の天才野郎が結婚まで始める始末。極めつけはなんていっても、一緒に小説家目指して語り明かした奴が、俺より先に本を出すってんだ。これがずっと文句言い合いながら切磋琢磨してきた奴ならまだいい。でもそうじゃないんだあいつは。あいつはいっつも、「君の方が先にデビューするさ。さっさと追いつかないと、置いていかれてしまう」なんて情けなく笑うんだ。もちろん毎度そんなことはないって笑い飛ばしてたさ。それでもな、心のどこかで俺の方が上だって思ってたんだろうなあ。いや今だって思ってるよ。俺の方がいくつも書いてるし、書いている年月も長い。実力は俺の方があるって、思ってる。  だけど結果が全てなんだよな。虚しいくらいに。
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