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雨音に声は消され聞こえなかったが、彼女は楽しげに笑い男の肩に付いた桜の花びらをさらりと払った。
友達?と疑いを持ちたかったが、彼女の手にはたたまれた赤い傘、思春期の男女が好んで一つの傘に入る理由はこれもまた一つしかない
今回が最後のチャンスかもしれないなんて勝手に思い浮かれてていたのは俺だ。
いつか、今度と逃げて、突然の雨に流れた桜と同じだ
行き場のない気持ちは両手を強く握らせ、来た道を引き返し、歩くスピードをいつもより速くさせた。
雨は予報通りに強くなって行く。幸いな事に、堪えられない声を叫びを雨音が包み消し去り、雨が涙のかわりをしてくれる。
ふと気がつくと雨滴にもつく桜の香りを感じ
涙に滲んだ足元には桜の絨毯が敷かれている。
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