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18歳になる年の春、僕は二年ぶりにソメイヨシノの元を訪れた。僕は大学生になっていた。
桜の花が咲いた頃に訪れてみると、やはり彼女はそこにいた。
僕はこの二年間での出来事を話した。美由紀と付き合ったこと。そして、フラれてしまったこと。付き合っている間も、ずっとソメイヨシノへの想いを忘れられなかったこと。
「美由紀はとても素敵な女の子だったけど、結局、最後まで僕が美由紀に恋をすることはなかったんだ。僕はこの二年間の間もずっと君を想っていた。人間と恋をするなんて無理なんだ。だって、僕の胸の奥の一番大事なところにはいつも君がいる」
ソメイヨシノは「ありがとう」と静かに言った。しかし、その言葉は喜びよりも、むしろ哀しみの色を帯びて僕の胸をチクリと刺した。
「言ったでしょう、優一。私はあなたの人生を縛ることを望まない」
ソメイヨシノの顔には、風が吹けば消えてしまいそうな儚い微笑みが浮かんでいた。まるで、彼女自身が消えてしまいそうな程、淡く哀しい微笑みだった。
「もう二度と来ちゃダメよ、優一」
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