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-28歳の春-
「優一、誰かを好きになれた?」
出会ってから14年。今年も、ソメイヨシノはそのことを僕に聞いた。風に舞った桜色の髪からは、柔らかな香りが漂っている。
僕は俯くしかない。でも、黙ったままではいたくなかった。僕はなんとか喉の奥から声を絞り出して答える。
「……なれなかった」
ソメイヨシノは乱れた髪を耳にかけながら、「そう」とだけ言った。
「やっぱり僕は、君以外好きになれない」
ソメイヨシノは僕の方を見て、哀しげに微笑んでいた。
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