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ソメイヨシノが下を向くと、薄紅色のまつ毛が彼女の目を覆った。春の日差しを受けて、ぼんやりと輝く彼女。
その姿は息が苦しくなるほど美しかった。
ソメイヨシノにとっては、僕が彼女に恋することで、女の子の告白を断ってしまったことが喜ばしいことではなかったみたいだ。
おそらく明日には花が散ってしまうであろうという日に、彼女は僕に向かってこう告げた。
「来年は来ちゃダメよ」
一瞬意味がわからなかった。取り乱して、何か言おうとした僕の口を、彼女は人差し指でそっと押さえた。彼女は諭すように僕に言った。
「優一、人間と恋をしなさい」
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