2605人が本棚に入れています
本棚に追加
ゆっくりと私に向かって歩いてくる健太をただ見ていた。
すぐ傍まで来て、何を喋る訳でもなくただ見つめている。
二人して喋る言葉を探していた。
何を話せばいいのか…
何をどう伝えればいいのか…
私たちの周りだけが静かになった気がした。
「ミカ…元気だった?」
先に喋ったのは健太だった。
「うん…健太も元気そう」
それだけ言うとまた二人して黙ってしまった。
「あのっ…」
私には聞かなきゃいけない事があるから。
これだけは聞かなきゃ。
「あの…子供…大きくなった?」
健太には意外な質問だったらしくキョトンとしている。
「うん。もう大きくなったよ。
歩き回って、いたずら好きで、元気過ぎて困るくらいだ」
目を細めながらそう言う健太の顔は父親の顔だった。
最初のコメントを投稿しよう!