第1章

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「『イワウリ』には油脂成分が含まれてるから、燃焼をうながすと思うよ」 「食べ物なのに、もったいない感じ」 「タネをたくさん持ってるから、すぐに作れるよ。キミの力を借りれば、あっという間だよ」 「ありがと」 アンデは、オレが床に置いた『イワウリ』を巻きつけた『セキタン』に向かって炎を吹く。ジリジリと『イワウリ』の油が燻り、小さな炎を上げ始める。 「もう少し」 オレは、更に細切りの『イワウリ』を燃え始めの『セキタン』に載せる。熱心に炎を吐き続けるアンデの努力も貢献し、『セキタン』は真っ赤に点火した。オレは燃える『セキタン』を載せるのに都合の良い平たい石を探し出し、その石の上に『セキタン』を載せる。『セキタン』は、風を吸い込むと赤く燃焼する。つまり、これで『風探知機』ができたわけだ。 オレは、『セキタン』を先ほどの風が吹く岩壁の辺りに持っていく。あちこちにかざしていき、『セキタン』が特に赤く燃える場所を特定する。 「ここだな」と、オレがつぶやくと、アンデは嬉しそうにオレに近づいてくる。 「私が『すり抜け』して様子を見てくるよ」と、オレが言うより早く、アンデは『上がり目の眼鏡』に体を畳み、岩壁を『すり抜け』て行った。まもなくして、彼女は戻ってきた。 「すごいよルード!確かにこの先に空洞があった」 彼女の報告を聴き、オレも『すり抜け』を試みる。ほんの少しの移動で、隣の空洞が見つかる。オレは変身を戻し、周囲を見渡す。すぐに、アンデもオレのそばに来る。 「道が続いているね」と、アンデは左手にまっすぐ伸びている洞窟の奥を指差す。 オレとアンデは並んで、周囲に注意しながら前方を目指す。オレが右側、アンデが左側というように。この洞窟の壁や地面の肌は荒々しく尖った感じで、ずっと長い間、誰も通ったことが無い雰囲気がある。まあ、秘密の空洞なのだから、当然といえば当然なのだが。踏みしめられていない地面の感触が履物の底を研いでいくようで、いずれ直に足を削られそうで、少し怖い。アンデは、オレの左側にしがみつき、辺りをキョロキョロしながらついてくる。左腕に彼女の負担がかかり、オレの脚の動きも併せて鈍くなる。
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