第1章

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やっとの思いで、ゴツゴツした洞窟にも終わりが訪れる。今度現れたのは、大きく円形に広がった地底湖である。ほぼ円筒形にくり抜かれた空洞の入り口付近にオレたちは今立っている。足場は崖になっており、その約2メートルほど下に水面がある。そして、50メートルほど前方の向こう岸には、その先に延伸していると思われる洞窟が見える。向こう岸へは、水が張っているので、泳げるのならば渡ることができそうだが、向こう岸にたどり着いてから1メートルほどの高さをよじ登らなければならず、水面から登るにはかなりの難関と言えそうだ。 「私、泳ぎは得意なんだ」と、アンデは言う。 「私があっちまで泳いで、向こう岸の崖を登れば…」 「あの崖をかい?」と、オレは向こう岸の垂直に切り立った崖を指差す。 「アレぐらいなら、私、何とかなる」と、アンデは、自信満々である。 「ごめん…オレがダメなんだ」と、オレは正直に告白する。 「オレには、あんな崖をよじ登ることはできない。それ以前に、あそこまで泳ぎ着けないよ」 そのとき、ゴゴゴっと地面が崩れるような音が、上の方から聞こえ、天井を構成する地盤の細かい欠片がパラパラと落ちてくる。オレは、円筒形の天井を見渡してみる。細かな無数のヒビが、縦横無尽に走っているのが見える。ちょっとした刺激を与えれば、今にもこの天井は総崩れになりそうだ。 「上のラウンドで岩石が落ちたんだと思う」と、アンデが髪の上に落ちてきた土の粒を払い除けながら言う。 「ここまで響くなんて」 オレは、足元に落ちている大きめの石を拾い、力を込めて思い切り天井にぶつけてみる。ガッと鈍い音を立て、石は天井に相応の大きさの窪みを作り、水の中にドボンと音を立てて落ちていく。 もう一度、同じくらいの石を拾い、天井にぶつけてみる。今度は、バラバラと天井のあちらこちらで音を従いつつ細かい石が落ちてきて、チャポチャポと音を立てながら水の中に沈んでいく。 オレは、さらに石を拾い、天井にぶつける。アンデはキョトンとした顔でオレのすることを見守り、やがて、オレと同じように天井への石ぶつけを支援する。 「これで、どうなるの?」 「とにかく、あの天井が派手に落ちるまで続けてみよう」
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