第1章

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「ルードって、本当に賢いね」 アンデは、大きな瞳をキラキラさせて、オレの顔を見つめている。照れくさいのを隠そうと、オレは後ろ向きに崖のツルを下り始める。アンデも、同じように後ろ向きに下りる。 『イワウリ』のツルは、岩壁をびっしりと覆っているので、手の持ちどころや、足の掛けどころに迷うことなく、すんなりと谷底まで降りることができた。先に落とした小さな太陽は、すでに燃えつきて、白い煙を出しながらくすぶっていた。 さて、上から見えていた洞窟の前まで来ると、それが意外と小さな穴であることがわかる。四つんばいにならないと通れないくらいの大きさだ。オレは体が小さく、すんなりと通れそうだが、オレよりも身長が高いアンデは、少しつらそうだ。細長い足を折りたたみ、まるでカエルかバッタがやりそうな姿勢で、オレの後ろをついてくる。 「大丈夫かい?」 オレは、時々後ろを振り向いて、彼女の状況を確認する。膝を岩の地面に押し当てながら、少しずつ前に体をずらそうとする様は、とても痛々しさを感じる。 「大丈夫だよ。心配ないよ」と、アンデは笑顔で強がる。 入り口から5メートルほど進むと、今度は急に洞窟の天井が高くなり、立って歩いてもすんなりと移動できるくらいの大きさになった。アンデはホッとした表情で立ち上がった。 「もう、膝が痛かったよ」 アンデは苦笑いで苦労を伝える。 細長い洞窟をどんどん進んでいくと、またもや円形の広い空洞が現れ、その中央にぼんやりと青く光る丸い形の敷石があるのが見える。アンデと出会った場所にあった『転送機』とよく似たものだ。ただ、先ほどのものと違うのは、敷石のすみの方にボタンのようなものがある点だ。 「これは、たぶん」と、オレは思案をめぐらせる。 「入り口の方だ。これを使うと、さっきの場所に行けるんだと思う」 「私たちから見れば」と、アンデも続く。 「さっきの場所に戻ってしまうのね」 「まあ、そういうことだね」 オレとアンデは、『転送機』を無視して、さらに先の探索を続ける。 四角く整形された洞窟、というよりも石の廊下がまっすぐに伸びている。床にはレンガ状に切った石が幾何学的に敷かれ、明らかに人の手によってつくられた建造物であることがわかる。
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