第1章

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通路の途中には、キレイに組み合わせてできた長方形の枡があり、透き通った水が貯められている。別にノドが乾いているわけではないので、オレたちはこれも無視して通り過ぎる。 そして、またしても行き止まりの空洞にたどり着く。ただ、これまでの雰囲気と違うのは、壁や床の造りだ。光沢のある外装材や床材を使用しており、何らかの建築様式に準拠した造りであることだ。 どこかの壁がすり抜けられるようになっているのだと憶測し、探し始めようとした時、正面の壁の奥からゴーグルと上がり目の眼鏡が浮かび上がった。すぐにプーカ族とファイガ族の子供たちの姿が現れ、はしゃぎながら、オレたちが通ってきた通路の方へ向かう。と、その前にオレたちの存在に気付き、笑顔で話しかけてくる。 「おにいちゃんとおねえちゃん、ラウンドから来た人たち?」 「そうだよ」と、アンデが答える。 「この先に行けばいいのかなあ」 「そう。ここの先に『転送機』があるよ」 「水汲み場は?」 「途中にあったよ」 「ありがとう」 子供たちは、喜び勇んで『転送機』へ続く通路を駆けていく。 オレは、子供たちが現れた辺りの壁に向かい、右手でそっと撫でてみる。 「ここをすり抜けた先が『ヘルメット・アンダーワールド』だ」 「本当に見つけたのね」と、アンデは体を震わせながら言う。 「え?」 オレは、アンデの顔を見つめる。アンデは、唾を飲み込む音をゴクリと立てる。 「『ヘルメット・アンダーワールド』のことは、キミが教えてくれたんじゃないか」 「え…ええ。そうね…」 アンデは、うろたえている。何だか妙だ。彼女は水を飲んでいないから忘れていないはずだ。 「キミは、この場所を知っているんじゃないのかい?」と、オレはアンデにたずねる。 「えっと、それは…」 アンデが言葉を詰まらせたところへ、コツンと足音がし、何者かがオレたちに近付いてくる気配を感じる。 「オマエは!」と、オレが叫んだ先に立っているのは、でかいモリ銃を持って、不敵にほくそえんでいる白いつなぎを着た野郎だった。 「アンデをせめないでくれるかな」と、野郎は言う。 「彼女はボクの頼みをきいてくれただけなんだから」 「え?」と、オレはアンデを見る。アンデは、下唇をかみ締めて、じっとうつむいている。
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