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「いい娘だよね。キミたちの冒険の後を追って、ずっとついてきてたんだよ。キミたち二人、とてもいい雰囲気だったね。見てて、微笑ましかった。でもね、映画なんかだと幸せな時って長く続かないんだよね。ということで」
野郎は、モリ銃をオレの方に向ける。
「キミたちの冒険物語もここで終わりというわけだ」
オレは、ナイフを右手に持ち、とっさに身構える。
「そんなものが何の役に立つ?果物の皮でもむくのかな?」
野郎は不敵に笑う。
「オマエの目的はなんだ?」と、オレは野郎にたずねる。
「オレたちに『ヘルメット・アンダーワールド』を探させて、どうするつもりだ?」
オレの問いに、野郎は眉をしかめ、大きなため息をもらす。
「これだから地中生物は…」
次に野郎が見せたのは、高くつり上がった眉、彫りの深い眉間のしわ、激しく充血した眼、膨張して膨らんだ鼻、強く食いしばった顎、ひきつった頬、あきらかに激しい怒りに満ちた顔だった。
「害虫駆除は、元から立つのが効果的だ。当たり前だろ!どれだけ駆除しても次から次へとわき出てくる地中生物には、もううんざりしてるんだ。キリがない。根こそぎ駆除したかったら『巣窟』を見つけて、そこを潰すしかない。ごく自然な考えだと思うけどね。そんなこともわからないから、キミたちはいつまでたってもバカのままなんだよ」
野郎は、モリ銃の撃鉄に指をかける。カチリと金属がぶつかり合う音が空洞内に響く。オレたちにとって、死を迎える警鐘だ。この音を聞いて、その次に聞けるのが、モリの発射音だ。そして、空気を注入する音が3回。そして、破裂音。その後は何も聞こえない。つまり死が訪れたということだ。
「そんな…」
アンデが力なくつぶやく。
「私のせいで『ヘルメット・アンダーワールド』が…」
「ふむ。そうだね」と、野郎はアンデを突き飛ばし、今度はモリ銃を彼女に向けて構える。
「おい、オマエ!」と、オレは野郎に向かって叫ぶ。
「彼女の命を助ける約束じゃなかったのか?」
「はあ?」
野郎は、モリ銃をアンデの方に向けながらも、オレへの注意を崩さずに言う。野郎の動きは素早い。すきを狙って攻撃をしかけても、モリ銃の方が早く、オレの腹に突き刺さるだろう。
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