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「残す残さないの基準は、ボクにメリットがあるか無いかに決まってるだろう。キミは、地中野菜が栽培できる。残す価値はあるとボクは評価するよ。でも、この娘は火を吐く以外は何も役に立たない。火なんてね、ボクにとっては技術でも何でもないんだ。この娘はいらないよね。当然の判断だよ」
野郎の指が動き、モリがアンデに向けて発射される。モリの先はアンデの腹部に突き刺さる。
「あ!」
アンデは、小さく悲鳴を上げる。野郎は、鼻歌まじりに空気送入レバーを二回往復させる。シュッシュッと音を立て、アンデの腹が大きく膨らむ。
「ああっ!」
アンデの長い脚は地面を支えきれず、膨らんだ腹で体を支える姿勢となる。
「あと1回だよ。プクプクポンだよぉ」
野郎は、オレの顔を確かめながら、楽しそうに舌なめずりを見せる。
「ル、ルード…」
アンデは苦しそうにしながらもオレの方を見る。大きな瞳に涙があふれ、しとどに流れ落ちている。
「ごめんね…」
オレは、先ほど収穫した『イワウリ』を一つ握りしめ、気が付けば、野郎めがけて、それを投げ付けていた。熟れた『イワウリ』は野郎の顔に直撃し、グシャッと崩れて、果実の中身が野郎の顔いっぱいに広がった。
「おいおい」
野郎は、付着した果実を手でぬぐい取り、今度はオレの方に向き直る。オレは、『イワウリ』をもう一つ野郎の顔にぶつける。同じように、熟れた果実が野郎の顔を汚すが、一発目ほどの衝撃を野郎には与えられなかった。
「悪あがきもさあ、いい加減にしてくれないかなあ」と、野郎はアンデに撃ち込んでいたモリを引き込み、今度はオレの腹に撃ち込んでくる。オレは、それを避けきれず、モリはオレの腹の真ん中に突き刺さる。
「順番が変わっただけなんだよね。それに、さっきから黙って聞いてれば、キミはボクのことを『オマエ』呼ばわりしてるよね。バカな地中生物のくせにさ、このボクに向かって生意気だよねえ。一生こき使って、地中野菜を育ててもらおうと思ったけど、『巣窟』に行けばプーカはいっぱいいるんだろう? だから、キミは死ね」
野郎の手が空気送入レバーを引く。今度は、オレが膨らむ番だ。腹に刺さったモリの痛みや体内に空気を送り込まれたことによる苦痛は不思議と感じない。仲間たちは苦しまずに死んだのかな、そう思うと、恐怖心は起きなかった。
「二回目」
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