第1章

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オレたちプーカ族と同じように地中で暮らしているもう一つの種族がいる。ファイガ族だ。プーカ族とファイガ族は、昔から友好関係にあり、お互いに協力し合って、地中で暮らしを立てている。ファイガ族もプーカ族と同じような変身による移動術が使えるほか、彼らは炎が使える種族でもある。彼らのブレス攻撃は、野郎への対抗手段としても有効な技である。プーカ族は炎が使えない代わりに、地中野菜を栽培する技術がある。両族はこの協力関係で、今まで何とかうまくやってきた。 ところが、あのモリを持った白い野郎が現れてからは、この平和だった地中生活が恐怖で支配されるようになった。野郎は地中を掘り荒らし、そこら中を穴だらけにしたり、オレたちが育てた野菜を奪ったり、仲間たちをモリで突き刺し破裂させたり、かなりの乱暴を働いてくる。オレたちは仲間たちと協力して野郎に立ち向かったが、野郎は日に日にずるがしこく、そして強くなっていき、大規模の『農場(ラウンド)』を荒らすようになってきた。 そして、ついにオレの仲間たちは全滅に追い込まれた。オレ一人だけが残されている状況は、先に説明したとおりだ。オレには、もう行き場が無い。 それでも、オレはどんどん、どんどん地中の奥深くへと移動する。あてがあるわけではない。とにかく夢中になって、奥へ奥へと進んでいく。もはや、地上からどれだけ奥へ進んできたのか見当がつかない。何も考えずに、ひたすら、ただひたすら、奥へと進んでいった。 ゴーグルに体を折り畳んだ状態での移動にも限界を感じ始めた時、不意に身の回りから地面が消え去ったような感触に包まれた。事実、土が大きく掘り込まれた空洞の中にオレは入り込んでいた。誰が、この空洞を掘ったのかはわからない。 野郎の仕業だろうか? オレは、折り畳んでいた体を開放し、空洞の地に両脚を踏みしめた。硬く冷たい感触が両脚の先から体全体に伝わってくる。空洞は緩い下りになって、オレの向く前方の奥へと、ずっと続く洞窟となっているようだ。
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