第1章

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長く地中に住む者の特権として、闇眼(やみめ)がオレには備わっている。明かりの差さない暗い洞窟でも、オレはある程度の状況を確認することができる。だが、その特権を駆使しても、この洞窟の奥は闇に包まれ、その先に何があるのか、ここからではまるっきり確認できない。 このまま暗闇に向かって進むしかないのか? 後ろを振り返るが、今まで擦り抜けてきた硬い地層が背後を覆い尽くしており、戻る判断をするならば、もう一度、ここを擦り抜けなければならない。 思わず、オレの頬が緩む。 このまま進むしかないようだ。 自然にオレの右足がザクッと地面を踏みしめる音を立て、前方への第一歩を生み出す。次に左足が動く。この単純な反復運動が連続し、オレは大手を振って暗闇を歩んでいる。 下り坂の支援を受けて、ザクザクと地面を踏みしめるリズミカルな足音に合わせてオレの躍動感は向上し、体中を熱くさせる。もはや減速を試みようにも制御が困難になるほど、オレの脚の動きは加速を続けるが、不思議と疲労感は生まれない。 次々と現れる闇を制覇し、やがて前方を覆いつくす硬い岩盤が視界に現れる。オレはそれが曲がり角であることを認識する。いつの間にか下り坂は平坦な地面へと落ち着き、オレの歩みもそれに合わせて調整され、勢いもほどよく治まったところで、曲がり角の壁の手前で停止できた。 そこで、洞窟は大きく右へと曲がっていた。オレは、洞窟の向かう先に首を動かし、その先に続く光景に眼を向けた。そこは、丸く繰り抜かれた大きな広間のようになっていて、円形の敷物のようなものがぼんやりと青く光っているのが見える。その周囲には、まるで敷物を取り囲むようにタケノコのような岩が何本も床から突き出ている。 オレは、その敷物のようなものが何であるのかを確かめようと、広間の中央を目指す。途端に敷物が強く輝きだし、低くうなるような音を立て始めた。敷物がうなっているのかどうかはわからない。とにかく、何かがうなり始め、その音は段々と大きく響き出す。もはや、両耳をふさがずにはいられないほど音は激しくなっている。そして、光り輝く敷物の上に、何やら人影のようなものが現れる。オレは、とっさに突起している岩の中に隠れる。 人影は少しずつその姿を露にし、やがてそれが二人のプーカ族の少年の姿であることがはっきりする。 「わあ」と、少年たちははしゃぎ声を上げる。 「本当に違うところに出た」
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