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「7番農場(ラウンド7)」と、アンデは答える。途端に笑顔は消え去り、声がまるで恐怖心にとりつかれたかのように震え始める。
「オレは1番農場(ラウンド1)だよ」と、オレの出身も伝えてみる。
「仲間はみんな白いヤツにやられちゃった」
「オレもだよ。オレ一人だけが生き残った」
「地上に逃げようとしたんだ。そしたら、ヤツが待ち伏せしてて、地下の方に逃げてきた」
「オレもだ」
同じような経緯でここに来たと思われるこのオレに、彼女は共感してくれたのか、幾分かは落ち着きを取り戻したようだ。
「いっしょだね、私たち」
「うん。いっしょだ」
アンデに再び笑顔が戻る。すると、彼女のお腹からグルグルと空腹を伝える音が鳴り響くのが聴こえてくる。
「お腹すいてるんだ?」
オレがたずねると、彼女は頬を赤くする。オレは、ベルトにぶら下げていた小さなポーチから乾燥させた『イワウリ』の実を取り出し、手の平に載せて、彼女に見せた。
「食べなよ」
「『イワウリ』の実だね。貴重なモノなのにいいの?」
「遠慮しなくていいよ。こいつはすぐに育つんだ」
「ファイガ族は地中野菜が作れないんだ。だから貴重品だよ」
「でも、ファイガ族は火を使える。これを乾燥するのに火が必要だ。プーカ族にはできない事だよ」
アンデは満面に笑顔を見せ、オレの手の平の『イワウリ』を受け取る。
「ありがと」
彼女は、あっという間にそれを平らげる。少しの量だが、彼女がいくらか元気を取り戻したのがわかる。
「キミはこれを『転送機』だと言ったね」
オレは、先ほどの丸い敷石のそばに近寄り、アンデにたずねる。
「これを使うとどこに行けるのか知っているのかい?」
「どこにも行けないよ。これは出口の方」
アンデは、自信たっぷりにそう答える。
「出口?」
「一方通行だよ。これは、あっちからこっちに来る時の出口」
「あっちって、どこのこと?」
「私たちの故郷だよ」
「オレたちの故郷?」
「護られた地下世界(ヘルメット・アンダーワールド)」
「何だそれは?」
「あんたが知らないのも無理ないよ。『忘却の水』を飲まされたんだから」
「何の話だ?」
「さっきのプーカ族の子供たちも言ってたじゃない。水を飲むように指示されてるんだよ」
「だから何の話?」
「ほとんどの子供たちは転送した後で水を飲むんだ。そして、二度と戻ってこれなくなる」
「戻れないって、どこに?」
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