ゴミ

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俺は、彩の左目の中のゴミになった。本当は左目そのものになりたかったんだが、目もゴミも似たようなもの。俺は幸せだ。 24時間、俺は彩と同じものを見る。会社へ行き、ヨガ教室へ行き、夕食後は読書タイム。感動した彩が、目をあけたまま涙を流さないかと緊張する時間だ。 目下の問題は、彩に恋人がいること。さっき居酒屋で、そいつがプロポーズしやがった。俺が暴れ出すと、彩は左目を押さえ、痛いとうずくまり、タクシーで帰宅したから返事は保留。もちろん俺はすぐに暴れるのをやめた。今は、例のツボをやさしく刺激してやっているところだ。彩はうっとりと目をとじている。よっぽど気持ちいいんだろう。 突然目をあけた彩が、スマホで眼科の検索を始めたので、俺は動揺した。お願いだから眼科にだけは行かないで。彩は立ち上がると、左目を鏡に近づけ、大きく見開いた。白目から片足が落ちそうになっている、情けない俺の姿が見えた。
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