1章

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その声と共に視界が変わる。仲間が再び現れ、転がる死体は敵に変わる。 「どこで欺かれた」 短い呼気に乗せ吐き出す言葉と、鋭く振ったワイヤー。 鞭の如くしなった先端が、仲間を捕らえる糸を切り裂く。 「健、解毒剤。お前もう無いだろ」 薬をぶん投げ、草木を踏み分ける音から敵が現れるタイミングを読んで、銃弾を眉間の単眼に叩き込む。 「匠、隼」 名を呼ぶだけで、連携の取れた動きが生まれた。 匠の引き絞る強弓が、細い金属ワイヤーを引き連れて親玉に突き刺さり、間髪入れずの電流ショック。 肉の焦げる臭いを嗅いだ時には脆く体勢を崩している。 だが、これは呆気なさ過ぎないか? 疑問が浮かんだ瞬間に隼の声が飛ぶ。 「擬態のダミーだぞっ」 声が終わる頃には皆、元の場所から離れている。 健の居た場所に降り下ろされた巨大な脚。
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