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先輩「それは初期事象のほんの一つに過ぎない。彼らもその程度だという認識しかないだろう。私は彼らにそこまで話していないからな」
俺「…‥…」
じゃあ何で俺には話してくれるんだろう…。先輩と同じ霊能力者だから…か?
俺「じゃあ…本当はどんなことが?」
先輩「……‥」
無表情のまま俺を見る先輩は、今言うべきかどうか悩んでいるようだった。
太「うわっ!つべて~!」
突然の大声にハッとして振り返ると、太が靴を脱ぎ、ズボンをめくってどぶの中に入っていた。
申也「おい、大丈夫か?」
阿曾「ちょっとー風邪ひかないでよー」
京司「大丈夫だって、馬鹿は風邪ひかないから」
太「京司うっせーよ!」
ワイワイ騒ぐ彼らはさすが幼馴染の仲だけあって少し羨ましいな。
でも……。
青井を見ると、彼女はそんな彼らから目を反らしているだけで、一向に捜索には加わる様子はない。
彼女にとってはどうでもいいのだろうか。死んだ友人の“未練”なんて。自分の保身の方が大事なのか?
なんだか…イライラして来た。
せっかく俺を迎え入れてくれた、初めての友達がこんなにも頑張っているのに、何もしようとしない青井が、何もしていない自分が。
行動を起せないのは俺も一緒じゃないか。傷つくことを恐れて。非難されることから逃げて。
何も見えないふりで、何も知らないフリで、何もしなければ…‥。
今いる場所よりは悪くならないと思い込んでいる。でも進んでみなければ分からない。そこが今より悪いのかいい場所なのかなんて。
俺「……先輩、俺が彼女に…言うよ」
先輩「ほぉ…」
先輩は興味深そうに片眉を上げて笑った。
俺が青井に近づくと、彼女はビクリと身を震わせた。30センチ以上も身長差があるから、見下ろされてビビっているようだ。他の部員達は手を止めてこっちを見ていた。
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