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俺は黙って混乱する青井を見ていた。彼女の中で今真実が一つに結び付いたんだろう。
顔は青ざめて自分が犯してしまった罪の重たさにようやく気が付いたらしい。
阿曾「彼女どうかしたのか?」
太「なんだよ。鬼ちゃん一体何があったんだ?」
俺「…探す必要はないんだ」
京司「どういう意味だ?」
俺「お守り…彼女の鞄の中にある…」
太「はぁ!?なんで!?」
京司「だって彼女がさっきお守りをなくしたって言ってたじゃん」
青井「…“さっき”?」
京司「あ、いや……」
阿曾「どういう事?なんで私達が探してるのに教えてくれなかったの?」
青井「勘違いして勝手に探し始めたのはそっちじゃない…。私は頼んでなんかないわよ」
阿曾「はぁー!?」
申也「おい、胡桃やめろって」
ど…どうしよう…。やっぱり事態は想像した通りになってしまった。
俺から話してもいいのか?
亡くなった女子生徒が親友の為に準備していたお守りを、青井が勘違いで盗んでしまい…。確信はないけど、それを探している時に事故に遭ってしまったかも知れない…なんて…。青井がそれを誰にも言わなかったのは、少なくとも罪の意識があったからだろう。
先輩「どうして…なんて分かりきったことだ」
全員が先輩のセリフで動きを止めた。
「そこに書いてあるだろ?」と先輩は言いながら、俺が持っているノートを指さす。
先輩「それが亡くなった女子生徒の死ぬ直前までやりたいことだったからさ」
青井の肩をぽんっと叩いた。
先輩「君の手に渡るまでの経緯がどうであれ、な。君はただここに残っている彼女の“未練”を晴らしてくれればいいんだ」
青井「で、でも…。私がこれを渡す資格なんて…」
俺「…あるよ。…資格じゃなくて…責任が」
青井「…‥っ!」
俺「逃げて何もなかったことにはするのは簡単だ。…けど…決着をつけるのがお前の義務だ」
申也「鬼ノ城君……」
先輩「…‥…」
青井「……‥」
青井が無言で、ゆっくりと頷くのを、俺達は黙って見ていた。
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