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「狂ってやがる……」
掠れてはいるものの、力強い声に、私の意識は呼び覚まされた。
私は目を薄く開くと、闇の中から浮上した意識から外を覗いた。瞼をゆっくりと持ち上げる。
「殺してやる!」
憤怒の声。大地から湧くかのような、野太く強い声。それは私の隣から聞こえた。
そちらに視線を向けると、そこにはあの男がいた。相変わらず、全裸で壁に繋がれている。
しかし、その肉体が変わっていた。先程は、逞しく強靭だったそれが、柔らかく、丸みを帯びたものになっているのだ。そして陰部には、あるべきものが無く……。
そこで違和感を覚えた私は、ゆっくりと自身の身体を見下ろした。
視界からの情報は、緩やかに脳へと渡り、状況を把握させていく。
平らだが逞しい胸板。硬く引き締まった腹部。そしてその下には、いつも私の中を掻き回していたのと同じ形の、でも私のではないものがある。
それらを全て認識した時、頭の中が急激に冷たくなり、次に爆発したような感覚が、私を襲った。
「いやぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!」
声が口から迸る。
叫ぶつもりはないのに、それは私の口から、喉から、次々に溢れてくる。
嫌だ、嫌だ、嫌だ!
それが感情だと、私は後から知った。
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