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学校の正門まで来たとき、声をかけられた。
「つっばきー、おっはよー。」
美玲だ。
トロンとしていて、悩み事なんてなさそうな美玲は、悪夢なんて見ないんだろうな。
「どうしたの? 顔色悪いけど。」
「ううん……なんでもないよ。」
「なんでもなくないでしょ。ピエロに殺される悪夢を見たような顔をしてるよ?」
……なんでもお見通しかい。
わたしは、昨日見た悪夢のことを話した。
「へ~、あるんだね、そういうこと。自分が見ている自分の夢を……って。なんか、箱を開けたらまた箱があるっていうドッキリみたい。」
ドッキリだったら、気が楽だったんだけどな。
昇降口で、靴を脱ぐ。
「もしかして、今も夢の中だったりして。」
「そんなわけないでしょ。だけど、なんで最後死んだのかな。夢なんだからさ、ハッピーエンドがいいのに。」
「ネガティブな人って、夢でもデッドエンドなんだって。」
「わたし、ネガティブじゃないと思うんだけど……。」
「意外と自覚してないもんよ。」
わたしが苦笑いしているとき、下駄箱に封筒が入っているのが見えた。
「おやおやおや、ラブレターですか? ついに椿に春が来ましたか!」
「ち、違うよ。ほら、ラブレターじゃない。」
今の時代、下駄箱にラブレター入れるやつはそうそういないと思う。
わたしは封筒を手に取る。
どこにでも売っているような、シンプルな封筒だった。
一瞬、図書委員からの催促状かと思った。
でも、中身は紙じゃない。
どこかで触ったことのある凹凸がある。
開けてみると、中にはストラップが入っていた。
目の下に涙が描かれた、ピエロのストラップーー。
「わっ!」
わたしはびっくりして、ピエロを手から離した。
夢に出てきたピエロと同じだった。
宙に浮かんだピエロは、いきなり炎をあげる。
燃え移り、一瞬にしてわたしの体が炎に包まれた。
服って、こんなに早く燃え上がるの?
ゆっくりと落ちていくピエロが、炎の中で笑ったような気がした。
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