壱の回 ピエロは夢の中で笑う

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学校の正門まで来たとき、声をかけられた。 「つっばきー、おっはよー。」 美玲だ。 トロンとしていて、悩み事なんてなさそうな美玲は、悪夢なんて見ないんだろうな。 「どうしたの? 顔色悪いけど。」 「ううん……なんでもないよ。」 「なんでもなくないでしょ。ピエロに殺される悪夢を見たような顔をしてるよ?」 ……なんでもお見通しかい。 わたしは、昨日見た悪夢のことを話した。 「へ~、あるんだね、そういうこと。自分が見ている自分の夢を……って。なんか、箱を開けたらまた箱があるっていうドッキリみたい。」 ドッキリだったら、気が楽だったんだけどな。 昇降口で、靴を脱ぐ。 「もしかして、今も夢の中だったりして。」 「そんなわけないでしょ。だけど、なんで最後死んだのかな。夢なんだからさ、ハッピーエンドがいいのに。」 「ネガティブな人って、夢でもデッドエンドなんだって。」 「わたし、ネガティブじゃないと思うんだけど……。」 「意外と自覚してないもんよ。」 わたしが苦笑いしているとき、下駄箱に封筒が入っているのが見えた。 「おやおやおや、ラブレターですか? ついに椿に春が来ましたか!」 「ち、違うよ。ほら、ラブレターじゃない。」 今の時代、下駄箱にラブレター入れるやつはそうそういないと思う。 わたしは封筒を手に取る。 どこにでも売っているような、シンプルな封筒だった。 一瞬、図書委員からの催促状かと思った。 でも、中身は紙じゃない。 どこかで触ったことのある凹凸がある。 開けてみると、中にはストラップが入っていた。 目の下に涙が描かれた、ピエロのストラップーー。 「わっ!」 わたしはびっくりして、ピエロを手から離した。 夢に出てきたピエロと同じだった。 宙に浮かんだピエロは、いきなり炎をあげる。 燃え移り、一瞬にしてわたしの体が炎に包まれた。 服って、こんなに早く燃え上がるの? ゆっくりと落ちていくピエロが、炎の中で笑ったような気がした。
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