②捜査

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数日前のこと。 警視庁の一室でバンっと大きな音が周囲の静寂を破った。 「…どういうことなんですか!?」 女性刑事が机を叩いて怒りを露わにするのを、隣に立つ大柄な男性がため息をついた。 「これからの捜査権限は特公に移る」 「…18歳未満のブレインパスが犯人の可能性が出たんですね」 「あぁ。被害者の男子高校生があんな人気(ひとけ)のない場所にほいほい着いて行ってる時点で身近な者の犯行の可能性が高いのは分かってただろ」 「昨日また新しい被害者が出たって言うのに…」 「囲(かこい)…、“弟の事件”でお前が新法について不満があるのは分かるが、お前は公僕なんだ。イチ個人の意見は…」 囲と呼ばれた女刑事は男の先輩刑事の意見を遮りまたバンっと机を叩いた。 「神志那(こうじな)さん!それは今関係ありません!」 「じゃあ何をそんなに…」 「いくら特公といえどやり方が横暴過ぎます!」 若手の刑事の言葉に神志那は眉間に皺を寄せた。 「なんだ?何かあったのか?」 「聞き込みしてたら現場に特公の課長が来たんです。その場でこっちの端末を全部無理矢理取り上げられて!私のスマホもですよ!?」 「本当か?」  傍にいた別の刑事に視線を移して聞くと、男性刑事も困った顔をして頷いた。 「“少年ブレインパス案件”だと捜査資料全部持っていかれてこっちが削除するのはいつものことですけど…。こんな強引なことされたのは初めてで…。」 「確かに…そいつはおかしいな…」 神志那が同意を示したことに「でしょ!」と囲刑事は嬉しそうだった。神志那は少し考えた後、席を立ち「ちょっと休憩してくる」と煙草を持って部屋を出て行った。
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