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「そうだ…誘拐されたんだ…‥」
後ろに手をやり、スタンガンを当てられた首筋を撫でる。あの時も衝撃はあったけど痛みはない。
俺達は気絶させられてここに運ばれた…‥。
「礼旺は…あいつはどこだ!?」
早くあいつを見つけないと!
あいつは知能障害があった時の後遺症で初めての場所や知らない人に会う時は俺がいないとダメだ。
パニックを起こして下手をすれば過呼吸や呼吸困難になってしまう。
それに…この紙に書かれているのが悪戯じゃなきゃターゲットにされている礼旺の命が危ない!
持ち物を確認するとポケットにスマホがあった。でもここは地下か山の中なのか電波はない。俺は腕時計をつけない派だからとにかく時間はこれで確認できる。
今は…20時か。2時間近く気を失っていたのか。
あ、そうだ。黒いリュックカバンがあったな。ちらっとだけみると食べ物があったので、詳しく中身は後で確認するとして取りあえず持って行こう。
礼旺がまだ気絶してればいいけど…‥。あいつが目を覚ます前に…いや、“達”と“脱出は5人”と書いてあったから他にも誘拐された人がいる。そいつらより先に見つけてやらないと。
状況はまだよく分かっていないけど、まず優先してするべきことは分かっている。
『礼旺を見つけ出す』。それが今の最優先事項だ。
紙は折ってポケットに入れて、二つあるドアのうち、鍵は持たされてないから電子ロックのついたドアの方に近づく。どうやら指紋認証らしく、ドアの横のパネルに指を当てると意外と簡単に開いた。
廊下は室内よりも明るかった。明かりは工事現場でよく見かけるような簡易式の電灯が点いている。
俺が出て来た部屋と同じ扉が右隣に一つ。廊下は20m間隔で電子ロックの扉で仕切られていた。
「右と左…どっちに行くべきか…」
悩んでいると、
ーーガチャっ
俺の隣の部屋の扉が唐突に開いて、中から人が出て来た。
「え……?」
その人物に俺は思わず目を丸くした。
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